【プレスリリース】健康格差の是正とデジタルヘルスリテラシーの向上を目指し、JaDHAが産学官と協働した初のプロジェクトに挑戦
~製薬大手やヘルステックベンチャーが参画、ビジョンペーパーを公表~
2025.03.18
「日本デジタルヘルス・アライアンス」(以下「JaDHA」)は、本年1月より健康格差の是正とデジタルヘルスリテラシー(*)の向上に向け、初の産学官と協働で推進する新規プロジェクト(以下「本プロジェクト」)を開始しました。本プロジェクトにて、誰もがデジタル技術を活用し健康・医療サービスの恩恵を受けられる社会の実現を目指した【ビジョンペーパー「デジタルヘルスリテラシーへの配慮を通じた産業振興と社会課題解決の両立」】を策定したので公表します。
デジタルの普及により世の中に散在する多様な健康情報と接する機会が増え、例えば特定の症状に悩む生活者が健康情報サイトで治療情報を調べたり、SNSで同じ悩みを持つ人々と情報交換を行い自身の健康状態の理解をより深めることが可能になりました。また、オンライン診療等の普及により生活者が医療従事者と頻回かつ直接コミュニケーションを図る機会が増え、「自らが情報を調べ正しく理解し見極めながらより良い行動を自ら選択する」ことの重要性が高まっています。更に、近年、デジタルヘルスリテラシーについて、ヘルスリテラシーを専門とする国際学会でデジタルだからこその課題やあるべき姿を議論するセッションが数多く設けられるなどアカデミアの領域でも注目が高まっています。
この様な背景から、ヘルスケア業界において、デジタルヘルスリテラシーに配慮したサービスの開発や提供を行うことの重要性がより高まっています。JaDHAは、デジタルヘルスリテラシーの向上やそれらに配慮したサービスの開発・提供に向けた活動を推進することで、健康寿命の延伸や労働生産性の改善といった社会に対する良い影響を生み出し、デジタルヘルス分野の健全な発展を通じた社会課題解決と産業振興へ貢献を目指し本プロジェクトに着手しました。
本ビジョンペーパーでは、
- デジタルヘルスリテラシーの向上や普及を推進することで期待できる健康格差の是正や持続可能な医療体制の構築といった望ましい社会の変化を体系的に洞察しました。具体的には、「ウェアラブルデバイス等で日々の活動量・睡眠状態を記録することで生活者が自ら生活習慣やQOL(Quality of Life)の改善に積極的に取り組もうとする」「症状検索アプリ等の活用で正確な情報を入手・理解し自らが医療機関への受診を選択する」「食事管理アプリ等の活用でバランスの取れた食事や適度な運動を自ら選択し実践する」など、生活者自らが良い行動を選択し健康的な行動変容を実践する新しい社会の変化が期待できます。
- また、生活者に寄り添った社会課題解決とヘルスケア産業振興の両立に向けた業界団体の活動とそれにより期待される効果について体系的に整理しました。具体的には、JaDHAによる勉強会実施や事例集のとりまとめ等を通じ、デジタルヘルスリテラシーに関する会員企業の認知・理解度を高め、デジタルヘルスリテラシーに配慮したサービス開発や提供を推進します。更に、アカデミアにおける最前線の理論、議論やテーマをいち早く理解し、それを社会実装につなげるなど、産学官の協働により効果的な実践への橋渡しを目指すべき役割として掲げました。
更に、今後のデジタルヘルスリテラシーの向上に向けた活動を共に推進する仲間づくりの第一歩として、
- 本年JaDHAで主催したデジタルヘルスリテラシーの向上に関する生活者への動機付けや生活者目線でのわかりやすい情報提供の必要性といった課題や具体的な解決策について産学官で議論を実施したイベント「JaDHA Innovation Forum」の概要
- 「自身の健康状態の可視化や関連情報の収集」「自身の健康に関する悩みを積極的に相談できる環境づくり」といったユーザビリティの工夫、「ヘルスケアに関心がない層でも初見で理解しやすい内容での情報の発信」「日常生活で感じた悩みを事前にアプリ内で記録することで医療従事者との円滑なコミュニケーションを支援する機能」など、JaDHA会員企業によるデジタルリテラシーに配慮した先進的な取組等についての活動事例を紹介しています。
なお、3月20日は体調を崩しやすい季節の変わり目として「未病の日」とされています。本プロジェクトの【誰もが健やかに生活できる社会の実現】という目標の実現に向け、「未病の日」を節目に、JaDHAは大阪・関西万博における経済産業省のフューチャーライフエクスペリエンスステージでのセミナー開催による本プロジェクトの活動報告をはじめ、様々な主体と協働を加速し、健康格差の是正とデジタルヘルスリテラシーの向上の実現に引き続き貢献してまいります。
順天堂大学大学院医学学科研究科 特任教授 福田 洋 先生(JaDHA Innovation Forum第1回基調講演者)からのコメント
いつでもどこでも誰でも安心、安全に保健医療サービスが受けられるために、国民のデジタルヘルスリテラシーの底上げはますます重要になることでしょう。ヘルスリテラシーが確保・維持・向上の機会が与えられることは基本的な人権の一種と思われ、健康格差の縮小に重要な役割を果たすと考えられます。また、そのために医療機関のDX化、AIの活用を含めた医療従事者のデジタルヘルスリテラシーの維持・向上も重要と思われます。産官学に加えて、現場の保健医療スタッフやサービス利用者を交えた議論や研究が進むことを期待しています。
東京科学大学 環境・社会理工学院技術経営専門職学位課程・イノベーション科学系教授 仙石 慎太郎先生 (JaDHA Innovation Forum第2回基調講演者)からのコメント
デジタルヘルスの発展に伴い、SaMDやNon-SaMDを含むデジタルヘルスサービスの適切な普及には、デジタルヘルスリテラシーの向上が不可欠です。医療従事者や一般市民が新しい技術を適切に理解し、活用できる環境を整えることが、持続可能な医療の発展につながります。JaDHAが推進するリテラシー向上の取り組みは、産学官の協力による包括的なアプローチが求められる重要な分野であり、その活動に大いに期待しています。特に、教育プログラムの充実や情報発信の強化により、デジタルヘルスの正しい理解が広がることを願っています。今後も業界全体での連携を深め、より良いデジタルヘルス環境の実現に貢献されることを期待しています。
本プロジェクトの始動経緯
近年進むデジタル化の波とともに、遠隔診療、健康管理アプリ、ウェアラブルデバイスなど多様なデジタル技術が医療現場や日常生活に浸透する一方で、利用者が適切に情報を扱えずその恩恵を十分に受けられない現状があります。日本人のヘルスリテラシーが国際水準と比べ低いとの指摘や、デジタルデバイドによる健康格差拡大のリスク、さらには予防可能な経済損失の推計値が示すように、適正な健康判断のための情報活用能力の向上が急務とされています。
また、生活者が様々なデジタルを活用したヘルスケアサービスを円滑に利活用するためには、サービス供給者である企業にもデジタルヘルスリテラシーへの配慮が求められます。企業は、生活者のデジタルヘルスリテラシーを高めるための活動を推進すると共に、分かりやすい表現やデジタルに不慣れでも容易にサービス利用を開始できる仕組みを整えるなど、誰もが利用できるアクセシビリティに配慮した環境を整備することも不可欠です。
このような背景から、JaDHAでは、生活者に寄り添った社会課題解決と産業振興の両立の実現に貢献するためのデジタルヘルスリテラシーの普及啓発プロジェクトを開始しました。
ビジョンペーパーの概要
ビジョンペーパーでは、デジタルヘルスの浸透に向けデジタルヘルスリテラシーに配慮した今後の活動指針や本活動がもたらす影響などをビジョンとして取りまとめています。また、参考資料としてデジタルヘルスリテラシーをテーマに本年1月・2月に開催したJaDHA Innovation Forumの開催レポート、会員企業におけるデジタルヘルスリテラシーに配慮した活動に関する事例集を掲載しています。
- ビジョンペーパー
ビジョンペーパーは「本書の位置づけ」「本プロジェクトの背景」「本活動がステークホルダーに与える影響」の観点でとりまとめています。
<本書の位置づけ>
近年、デジタル技術の急速な進展により、遠隔診療や健康管理アプリ、ウェアラブルデバイスなどが実用化される中で、利用者がこれらのサービスの恩恵を十分に受けるためには「デジタルヘルスリテラシー」の向上が不可欠であることを踏まえ、国民一人ひとりが分かりやすい情報を基に適切な健康行動を取れるよう、また、企業が利用者視点でのサービス開発や提供を進めるための共通認識と基盤を整えることを目的に策定しました。<本プロジェクトの背景>
日本人のヘルスリテラシーの自己評価は国際的に低いと指摘されており、遠隔診療やウェアラブルデバイスなどが急速に普及する状況において、デジタル技術を使いこなすことが難しい生活者へサービスの恩恵が行き渡らない可能性が懸念されています。そのため、企業や専門家が連携し、生活者がデジタル環境下で得た情報を適切に活用できるよう、デジタルヘルスリテラシーに関する認知や理解度の向上を目指すと共に、デジタルヘルスリテラシーに配慮したサービスを開発し提供することが重要です。<ステークホルダーに与える影響>
本活動は、デジタルヘルスがもたらす恩恵を生活者、医療関係者、保険者、政府・自治体など多方面に浸透することを目指しています。生活者には、オンライン診療や健康相談の普及などにより、通院負担の軽減や生活習慣の改善による個々人の健康増進やQOL向上などの様々な恩恵がデジタルにより浸透することが期待されます。医療関係者には、電子カルテやオンラインシステムの活用で事務効率化や医療の質向上が期待されます。また、保険者・自治体においては、デジタルを活用した適切な健康支援の実施や医療費の抑制、健康格差の是正などに向けた施策の立案と実行が期待されます。デジタルを活用した持続可能な社会実現の実現に向けては、様々なステークホルダーの連携や、デジタルを活用した多様なサービスの創造と持続的な技術革新が不可欠ですが、これだけでは目指すべき社会像の実現は達成できません。デジタルヘルスリテラシーの向上やその実現に向けては、各ステークホルダーが連携し、各々の観点や環境を踏まえあるべき姿や課題解決の具体的な施策を共に考え実行する場が必要です。JaDHAとしても産学官連携した活動を意欲的に進めていきたいと考えています。 - JaDHA Innovation Forumイベントレポート
2025年1月27日および2月17日に「デジタルヘルスリテラシー」をテーマにしたJaDHA Innovation Forumを開催し、デジタルヘルスリテラシーの造詣に深い有識者による基調講演、産学官の関係者によるパネルディスカッションを実施しました。イベントレポートでは講演内容や議論を紹介しています。
- デジタルヘルスリテラシー向上のための活動事例集
デジタルヘルスリテラシーの向上には、①健康情報を収集し、自分に適した情報を判断し、②その情報をもとに意思決定・行動つなげ、③その情報を使ってコミュニケーションを行う環境が構築されていることが重要です。このような環境構築を進め生活者のヘルスリテラシー向上に繋がる工夫としてJaDHA会員の実践する先進的な取り組みを具体的な事例集として紹介しています。
ビジョンペーパー「デジタルヘルスリテラシーへの配慮を通じた産業振興と社会課題解決の両立」
今後の予定
JaDHAでは、デジタルヘルス分野の健全な発展を通じて日本の社会課題解決と産業振興に貢献することを目指す業界団体として、誰もがデジタルヘルスの恩恵を享受できる社会の実現に向けて本取組の広報活動や勉強会等の開催等、積極的に取り組んでいきます。
謝辞
本プロジェクトの始動に際し開催したJaDHA Innovation Forumにおいては、産・学・官の立場からご登壇をいただくなど、多くの示唆をいただきました。この場を借りて関係者の皆様へ厚く御礼申し上げます。
検討体制
本プロジェクトは、JaDHAの「デジタル医療サービスの円滑な利活用に向けた基幹プラットフォーム構築 検討WG」及び「デジタルヘルスアプリの適切な選択と利活用を促す社会システム創造WG」の横断コアチームにおいて取り組んでいます。
- 株式会社asken(https://www.asken.jp/)本プロジェクトリーダー企業
- Ubie株式会社(https://ubie.life/)本プロジェクトリーダー企業
- 塩野義製薬株式会社(https://www.shionogi.com/jp/ja/)
- シミックホールディングス株式会社(https://www.cmicgroup.com/)
- 第一三共株式会社(https://www.daiichisankyo.co.jp/)
- 株式会社テックドクター(https://www.technology-doctor.com/)
(*)デジタルリテラシー:
デジタル技術を活用して健康情報を収集/理解し、意思決定・行動に活用する能力
本件に関する問い合わせ先
【報道関係者様】事務局(南雲) UN_6001.group@jri.co.jp
【事業者様】WGリーダー(松尾・井上) public-affairs@dr-ubie.com
※入会に関するお問い合わせはJaDHAホームページ(https://jadha.jp/admission/index.html)をご覧ください。