【プレスリリース】日本デジタルヘルス・アライアンスと米国DTAが
デジタル治療の普及促進を図る国際的な協働を開始
~世界規模でのデジタルヘルス産業の創成を目指す~
2024.10.15
「日本デジタルヘルス・アライアンス」(以下「JaDHA」)は、「デジタルセラピューティクス・アライアンス(Digital Therapeutics Alliance、本社: 米国バージニア州アーリントン、代表: アンドリュー・モルナー)」(以下「DTA」)との間で、デジタル治療の一層の普及促進を目指す国際的な協働に関する覚書を締結しましたので発表します。
本覚書の下で、JaDHAとDTAは、2030年にデジタル治療が社会実装された際の医療提供体制のあるべき姿を明らかにした上で、それに至るロードマップの策定に取り組み、持続可能な医療提供体制の実現に向けて協働してまいります。
本覚書締結の背景と目的
経済産業省は、医療機器産業を発展させるために目指すべき方向性およびそのための戦略や支援策を示すものとして、「医療機器産業ビジョン2024」 (注1)を2024年3月に公表しました。その中では、デジタル治療を含む医療機器産業が高付加価値産業として成長していく方向性として、イノベーション創出のための研究開発投資とグローバル展開による投資回収の2 つの循環による産業成長が掲げられています。
一方、海外でも米国を筆頭にデジタル治療の社会実装を推進しようとしています。ただし、デジタル治療が重要な治療選択肢としての地位を確立できている国はまだなく、また、各国の承認や保険償還制度の違いから、国際展開も難しい状況です。
本覚書は、JaDHAとDTAが、デジタル治療の国際的な理解と認知率の向上および社会実装を促進するための協力関係を確立することを目的として締結されました。両者の知見や経験を融合させることによって、2030年という近未来において、生活者の利便性と医療経済性を両立したデジタル技術が広く世界に実装されることを目指します。
DTAは、デジタル治療の発展を図ることで世界の医療を変革することを目指す、国際的な業界リーダーを会員とする非営利組織です。各国のデジタル治療を巡る政策や規制の枠組み、資金調達環境などの情報交換を通じ、国際的な連携のハブとなる活動を推進しています。JaDHAは日本を代表する業界団体として、本覚書の下でDTAの国際連携に向けた枠組みに積極的に参画し、本邦のデジタルヘルス産業の国際化に貢献します。
本覚書の内容
- 医療従事者や生活者などのデジタル治療の認知率向上に向けた協働
わが国におけるデジタル治療に対する認知率についての調査の結果をみると、医師も生活者もそれぞれ15%前後にとどまっています(注2)。また、各保険会社が保険償還を推奨するデジタル治療のリストを作成するなど、提供側の体制整備が進む米国でも、わが国同様に医師や生活者への認知が広がっていない状況です。こうした認知率の低さは、デジタル治療の普及が進まない大きな要因の一つとなっています。
そこで、JaDHAとDTAは、医師や生活者からの認知率向上に関する両者の知見の共有を開始します。JaDHAが実施してきた各種の調査研究結果のほか、DTAが推進する患者参画型のデジタル治療開発や患者団体への情報提供の在り方などを活用することで、日米両国においてより効率的にデジタル治療に関する認知率向上と普及促進を図ります。 - デジタル治療の承認、保険償還プロセスなどの国際的な調和に向けた協働
企業も規制当局も、デジタル治療の開発や審査などに費やせる資源は限られています。そのため、安全性と有効性が担保されたデジタル治療を確実に開発し上市させるには、各国における薬事承認や保険償還を得るまでのプロセスを合理化させ、それを国際的に標準化させることが重要です。
JaDHAとDTAでは、各国の規制当局との国際的な連携を図りながら、デジタル治療の薬事承認および保険償還の在り方について提言を行い、新たな規制体系の構築を目指します。 - 情報共有体制の整備と「2030年のあるべき姿」の実現に向けたロードマップの策定
JaDHAとDTAは、年次集会への相互参画や幹部による戦略会議の実施などを通じて、最新の国際的なデジタル治療の動向への理解を深めます。今後の発展に必要な課題解決などについての議論も行い、2030年にデジタル治療が社会実装されたとした場合の医療提供体制のあるべき姿を明らかにし、それに至るロードマップを策定する予定です。
また、両者の先進的取り組みやベストプラクティスなどを共有し、会員に還元することで、デジタル治療の持続的な開発・上市の実現および一層の発展を目指します。
JaDHAは、デジタル治療の認知率向上や利活用促進、世界規模でのデジタルヘルス産業の創成を通じた、持続可能な医療提供体制の実現を目指しています。デジタル治療に関わる企業・団体に対し、デジタルヘルスの未来を共に築く機会を積極的に提供してまいります。
写真左から
Danny Kim: Head of WELT USA at WELT, DTA Board of Directors
岩﨑聡: JaDHA 外部連携特命副会長
Andy Molnar: DTA Chief Executive Officer
三春洋介: JaDHA 会長
Anand Iyer: Chief Analytics Officer at Welldoc, DTA Board of Directors
阪口岳: JaDHA 診療報酬WGリーダー
Jessica Hauflaire: DTA Chief Operating Officer
デジタルセラピューティクス・アライアンス(Digital Therapeutics Alliance、略称: DTA)について
DTA は、デジタル治療の社会実装により臨床および医療経済の成果を向上することで、世界の医療を変革することを使命とする、業界リーダーやステークホルダーからなるグローバルな非営利組織です。DTA は、患者、医師や保険者が臨床および医療経済的な成果を改善するために、高品質でエビデンスに基づいたデジタル治療の利活用促進に向けた活動を推進しています。デジタル治療開発企業、製薬企業およびアカデミアや法律事務所など80以上の会員団体、臨床医や投資家および保険者などのアドバイザリーボードと共に活動しています。
http://www.dtxalliance.org
日本デジタルヘルス・アライアンス(JaDHA)について
業界の垣根を越えた横断的研究組織であることを特長とし、各業界の都合、論理や思惑を排除し、真の価値追求に向け、あるべき論に立脚した議論と活動の推進を理念とする組織です。
具体的には、
- 日本におけるデジタルヘルス産業の発展、関連サービス・技術の普及促進を阻害する課題を深く洞察し、
- 課題を克服するための施策および方策の研究を進め、研究成果の情報発信・政策提言・普及活動などにとどまらず、政策・制度の実装の追求を通じ、
- デジタルヘルス産業の活性化および関連サービス・技術などの社会的受容性の向上などの実現により、国民の健康増進と産業発展に貢献する
ことを目的としており、ICT企業、ベンチャー企業および医薬品・医療機器メーカーなど約100社の会員が活動しています。
(注1)医療機器産業ビジョン2024:
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/iryoukikisangyouvision2024/iryoukikisangyouvision2024.html
(注2)デジタル治療に対する医師の認知率については「DTxの認知度に関する定量調査」(塩野義製薬株式会社)、生活者の認知率については「診療に関わる情報収集や治療用アプリの認知等に関する実態調査」(JaDHA)を参照した。
本件に関するお問い合わせ先
事務局(南雲) UN_6001.group@jri.co.jp
※入会に関するお問い合わせは、JaDHAホームページ(https://jadha.jp/admission/index.html)をご覧ください。