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【プレスリリース】SaMDリバランス通知(二段階承認)の積極的かつ適正な利用促進に向けた想定事例集(疾病治療用プログラム医療機器)
~SaMD開発の促進とデジタル医療の普及に向けて~

2024.09.17

 日本デジタルヘルス・アライアンス(以下「JaDHA」)は、「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱いについて」(以下「SaMDリバランス通知」)の適正な利用促進を目的として、「SaMDリバランス通知(二段階承認)の積極的かつ適正な利用促進に向けた想定事例集(疾病治療用プログラム医療機器)」(以下「本想定事例集」)を作成したので公表します。

本想定事例集作成の背景と目的

 近年、高齢化や健康・医療・介護ニーズの増大、持続可能な医療提供体制の実現等の課題を背景に、デジタルヘルスに関連する革新的技術が次々に創出され、多様なアカデミア・企業において様々な製品・サービスが精力的に開発されています。デジタルヘルスの1つであるプログラム医療機器(Software as a Medical Device、以下「SaMD」)は、医療の効率化や治療選択肢の拡充に加え、従来の医薬品や医療機器では満たされないアンメットメディカルニーズ(以下「UMN」)の解決に資することが期待されています。

 一方、SaMDの実用化においては、現行の薬事規制が適さない実態も指摘されており、国際的に規制改革に向けた多様な取り組みが試行されています。先行する欧米では、いち早く規制改革が進み、SaMDの承認数及び開発品目数で本邦は大きく差をつけられています。

 本邦では、2022年に骨太の方針でSaMDの開発促進が掲げられると共に、厚生労働省より「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」(DaSH for SaMD,注1)、厚生労働省と経済産業省から共同で同パッケージ戦略の第2弾(DaSH for SaMD2,注2)が公表されました。Dash for SaMD2において「二段階承認の考え方の整理及び公表・承認事例の公表」が新たな施策として位置付けられ、「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱いについて」(注3)が2023年11月16日に発出されました。

 今後の技術進展に伴い多様なSaMDの開発が期待される事から、通知の適用基準等を画一的に定める事は、かえってSaMD開発を阻害する事が憂慮されます。そのため、SaMDリバランス通知の中では、明確な適用基準等が敢えて記載されていません。

 そこで、JaDHAでは、SaMDリバランス通知の理解を深めると共に、積極的かつ適正な利用促進に資するべく、疾病治療用プログラム医療機器について、二段階承認の考え方や適用する上での留意点等を取りまとめた想定事例集を作成しました。

SaMDリバランス通知とは

 SaMDリバランス通知は、SaMDの特性を踏まえた効率的な開発及び薬事承認を目的とした二段階承認について、その取扱いや運用を明確化した通知です。SaMDは、有体物たる医療機器に比べ侵襲性が低く相対的に安全性が高く、技術進歩や臨床現場のニーズに対応した改良や性能向上が頻回かつ継続的に行いやすいといった特性があります。このような特性を活かし、市場へ早期に投入し、臨床現場で使用された経験を踏まえながら臨床的エビデンスを収集し、製品価値を磨いていく効率的な開発及び薬事承認を実現することを目的に、SaMDリバランス通知が発出されました。

本想定事例集の概要

 本想定事例集の作成にあたっては、規制当局(*)や業界団体と意見交換を重ね、二段階承認の考え方や適用する上での留意点等を分かり易くまとめました。JaDHAと一般社団法人日本医療機器産業連合会で共同検討の上、疾病治療用アプリと疾病診断用アプリの想定事例を作成しています。本想定事例集は、疾病治療用アプリを対象に15想定事例を掲載しています。

本想定事例集は、二部で構成されています。
第一部は、SaMDリバランス通知の概要及び利用における留意点をまとめています。また、SaMDの製品コンセプトや試験デザインによっては、二段階承認の考え方に馴染まない場合もあるため、二段階承認を活用することが望ましい開発戦略の考え方を解説しています。例えば、二段階承認の適用条件や第一段階承認時の標榜範囲、有効性に関する蓋然性、対照群としてのシャムアプリ等の設定の考え方について解説しています。

 第二部は、15の想定事例を対象に、二段階承認の考え方に基づく開発戦略を解説しています。具体的には、二段階承認の適用条件の理解を深めるため、適用可能な事例に限らず、適用が不可もしくは困難な事例も掲載しています。各想定事例について、冒頭に二段階承認の考え方に基づく開発戦略の要点を整理した上、第一段階と第二段階における試験デザインや想定アウトカム、標榜内容(使用目的又は効果)等をサマリーシートとして整理しました。また、各想定事例を同じ形式で作成することで、事例間の比較がしやすいように工夫しています。更に、規制当局によるコメントを付し、薬事規制上の考え方を確認できるようにしています。

(*) 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課及び医薬品医療機器総合機構(PMDA)プログラム医療機器審査部

今後の予定

 本想定事例集は、二段階承認の考え方を整理することで、SaMDリバランス通知の積極的かつ適正な利用の促進を目的としています。現時点では、SaMDリバランス通知の適用事例は公表されていませんが、今後、適用事例が蓄積される中で、承認事例の公表が期待されます。JaDHAは、承認事例等を基に、より有用なSaMDリバランス通知の活用の在り方について、規制当局や業界団体との意見交換を継続したいと考えます。また、技術の進歩に伴い新たなSaMDの登場も予見され、現行制度の運用のみならず、新たな制度設計の在り方等、SaMDの適切かつ迅速な開発に資する規制改革の在り方を検討します。

検討体制

 本想定事例集は、JaDHAの「WG1:デジタル治療に適した臨床評価基準・承認要件の新区分の検討」(以下「本WG」)によって策定されました。本WGは、ベンチャー企業をはじめ、医薬品・医療機器企業、IT企業等のデジタルヘルス領域に関わる幅広い分野の企業で構成されています。

(五十音順)

(注1)「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」(2020/11/24)
https://www.mhlw.go.jp/content/11124500/000761867.pdf

(注2)「プログラム医療機器等実用化促進パッケージ戦略2」の公表について(2023/9/7)
https://www.pmda.go.jp/files/000264490.pdf

(注3)「プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱いについて」(2023/11/16)
https://www.pmda.go.jp/files/000265514.pdf

本件に関するお問い合わせ先

【報道関係者様】事務局(南雲) UN_6001.group@jri.co.jp
【事業者様】WGリーダー(小島) kojima.shinichi@mm.mt-pharma.co.jp
※入会に関するお問い合わせはJaDHAホームページをご覧ください。

ご入会お待ちしております